【空き家問題】相続が必要な患者さんやご家族に知ってほしい事

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不動産業界にお勤めの方から、「空き家問題が最初に問題として出てくる場面は?」と質問が。どうして看護師の私に聞くんだ、と思いましたが、ない頭をひねる。

答える前に教えていただきました。「空き家問題は相続で発生する」そうです。

日本の空き家問題

日本の空き家問題は、特に地方で深刻です。高齢化や人口流出に伴い地域住民が減少し、空き家が増加しています(日本の人口は2008年頃をピークに減少)。

日本には約849万戸の空き家があり、これは全国の住宅の約13%を占めています(10件に1件空き家状態)。ここ20年で空き家総数は1.5倍に増加。

特に地方で空き家の割合が高く、中には何十年もの間放置され続けているものがあります。

空き家の増加率についてのグラフ
参考元:国土交通省住宅局令和4年10月

空き家率が最も高いのは和歌山県および徳島県で、次いで山梨県。これらの県で特に高齢化が進んでいるのか?と思い高齢化率を調べてみましたが、どの県も横ばいで特記すべきものは見つかりませんでした。

ただ、産業の衰退に伴う人口の減少や深刻な高齢化、地方創生の取り組み不足といった地方でより顕著な問題が原因になっていることは間違いないと思われます。

私が思っているより、深刻な問題でした、、、。

※参考資料は最終ページに載せてあります

空き家問題が社会に与える影響

空き家の写真

防犯リスク等の社会的影響

空き家は犯罪の温床になりやすく、不法侵入や不法占拠のリスクが高まります。

空き家の火災で最も多い原因は「火災」、次いで「火災と思われる火災」です。

環境的・衛生的な影響

放置された空き家は外見が悪く、地域全体の景観を損ないます。また、長時間放置されている空き家は老朽化が進み、倒壊の危険性が高まります。

ここには心的影響も大きく関わっていると言えます。私が小学生の時、自宅までの通学路がいくつかありました(正規ルートではない道で、遊びながら帰ることもあった)。その一つの道路に空き家があり、何故か見るたびに「怖い」「不安」というストレスが押し寄せるのです。

空き家は衛生環境の悪化で、住民の健康に直接影響を与えるだけでなく、環境の悪化が心理的な負担になる可能性を含んでいます。

空き家が増えると地域全体の価値が下がる

不動産屋さんからのお話で一番印象に残っている部分です。空き家の増加は、地域全体の価値を低下させる要因の一つです。

50m以内の長期空き家が1件増えるごとに、周辺住宅の取引価格が約3%低下することが、国土交通省の調査により明らかとなっています。1件増えるごとですから、2件あれば取引価格は6%減ということになります。住宅価格が2,000万円の時、空き家1件で約60万円減、2件で120万円減です。

空き家増加による地域需要の減少で、購入希望者が少なくなり、売却価格が下がる可能性があるとのことです。地域全体の魅力も低下し、住民の満足度も減ってしまいます。

相続と空き家問題をセットで考える

空き家問題がどこで発生するかについてのグラフ。一番多いのは相続
参考元:国土交通省住宅局令和4年10月

空き家問題は、相続の際特に顕著に表れます(グラフを見ると、空き家の取得経緯の半分以上は相続)。相続が発生するとき、多くの家族が遺産分配に頭を悩ませますが、特に不動産の場合次のような問題が発生します。

相続人が複数人いる場合:誰が管理するかで意見が分かれ、そのまま空き家として放置される。

売却や賃貸の難しさ:相続した家が遠方にあったり、老朽化が進んでいると、売却や賃貸が難しく、そのまま空き家として放置される。

税金や維持費の負担:相続した家の固定資産税や維持費が負担となり、相続人が放棄するケースも見られます。

患者さんやご家族に考えて欲しいこと

患者さんやご家族に、相続のときに発生する空き家問題について考えて欲しい事

ここからは、空き家問題に対して医療がどう関わっていけるかについてお話します。

高齢者の健康状態と相続のタイミング

適切なタイミングで相続を進めるために、特にご高齢者やそのご家族は医療機関で健康状態を確認した際、認知症などの症状に応じて外部サービスを利用しながら相続の準備を進めましょう。

終末期ケアに移行する際は、財産の整理や相続の準備を進めることで、遺族がスムーズに相続手続きを行えるようになります。

患者さんが「もしもの時に備えて意思決定しておこう」と決めた際、医療や治療の選択だけでなく、貯金や不動産をどうするか一緒に考えると良いと思います。

相続後の生活と医療ニーズ

FP(ファイナンシャルプランナー=お金の先生)の勉強会に参加したとき、将来の医療費や介護費を不動産を売却することで捻出する、という事例を聞きました。

相続財産を医療費に充てる計画を立てることで、医療費や介護費負担を軽減し、遺産が有効に活用されるケースがあります。

住み慣れた家を売るという決断は簡単ではありません。家族内で話し合いが必要ですが、このようなケースもあると知っておいて損はないです。

また、ご高齢者が住宅を手放し施設へ入所する、住み替えるなどの場合、医療機関と連携して新しい住居で継続した医療・介護サービスを確保できるよう、事前準備をお忘れなく。

メンタルヘルスのサポート

相続は非常に難しく、心理的負担の大きい問題です。

相続手続きが進む中で、ご本人やご家族が感じるストレスはどこで解消できるのか?と不安に感じる方も多いと思います。

私の方でも、相続を進める相談所と協力しながら、患者さんやご家族の「自分らしく生き抜く」サポートが出来たらと思います。

相続やお金の問題でお悩みの患者さんやご家族様がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。

参考文献

総務省ー令和5年住宅・土地統計調査
国土交通省ー空き家の現状と課題
国土交通省ー我が国の空き家の現状と最新の政策動向について
国土交通省ー参考資料(不動産・建設経済局 不動産業課・参事官)